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2014年4月26日土曜日

5話 ミソサザイの谷


序章・ 5・ 101112


青空
 依田川は武石川との出合いを過ぎると里を流れます。
暫くすると大門川と和田川との出合いを迎え、この先の上流には依田川の名はありません。
今日は左から流れ込む大門川を上がってみましょうか。

この川の上流には車山、白樺湖、女神湖と観光地が多いですね。
乗用車で乗り付けてキャンプもできますよ。
峠の国道沿いを流れる大門川本流は、家族で遊べる渓流って所ですかね。
その大門川が峠に差し掛かる手前、左の深い谷から流れ込む沢があるんです。
右に は土俵を持つ神社があるでしょう?
ホラ、すぐに分かったでしょう?ここは大門川支流、本沢と呼ばれているんです。

さあ、我が愛車「軽トラ四駆スペシャル」に乗ってくださいな。
ツーシーター、四輪駆動、排気量550cc、走行距離15万km超。いい車でしょう?ハハハ・・・数年前、知り合いの農家から譲ってもらったんですがね、まだまだ走りますよ。
本沢に入る道は舗装されているから快適でしょう?
右側の田んぼの向うから沢が近づいてきましたね。
一の橋を渡ると左下に沢が見えます よ。
なかなか良い渓相でしょう?楢のトンネルを抜け二の橋を渡る頃には、舗装もなくなり山の色が濃くなりますね。
春先は山吹があちこちに顔を出して、綺麗 ですよ。三の橋を過ぎた所で降りてみましょうか。

沢に降りたら、まずは一服ですね。
仕掛けを作りながら・・・沢の音を聴きながら・・・ゆったりとした気分に浸るんです。
気持ちいいでしょう?釣りを忘れてしまう事もある程ですよ。
少し、沢を眺めてみましょうか。

「ピピッピピッ」と波を描いて飛んで行くのはキセキレイですね。
胸から腰にかけての黄色が鮮やかでしょう。
この鳥、この辺りの水辺には 何所でもいるようですよ。
石に舞い降りては、体を揺すり、長い尾羽を上下に動かし続けています。
「ピピッ」と澄んだ声を残して、飛んで行っちゃいました ね。

「おっと。びっくりしたぁ。」音もなく黒い弾丸のように川筋を一直線に低空飛行して行ったのは、カワガラスですね。
カワガラスには、い つも驚かされるんです。
突然現れては、アッという間に上流に消え去るんですよ。
無口な奴でしてね、あまり声を聴いた事はありません。
飛び立つ瞬間、 「グゥィッ」と鳴いたような気がしましたが、果たして鳴き声なんでしょうかね?
そういえば、師匠クドチャンはカワガラスが大きな淵に潜るのを見た事がある そうですよ。
不思議な鳥ですね。
ミソサザイ

「チチチピィピィチュルルチリリリ」いました、いました。
短い尾羽を立てて、丸い腰を振りながら岩の隙間からの登場です。
チョンチョンと 跳ね歩きながら、虫でも探してるんでしょうかね。
こげ色の体はスズメより小さいでしょう。ミソサザイですよ。
私、この鳥が大好きでしてね。
沢で出会うと必 ず見入ってしまうんです。

大木の根は地面を這い回った後、沢沿いで大きく垂れ下がり洞のようになってますよ。
その中は薄暗くジメジメしているようですね。
周りの 岩には苔が生し小さな羊歯も見えます。
子供の頃なら仲間だけの秘密基地になっていたでしょうね。
ミソサザイは、そんな所で忙しく囀り、はしゃぎ回っていま すよ。
なんだかワクワクしてきませんか?

おや?もう陽が落ちてきましたよ。谷は空が狭いですからね。
陽が落ちるのも早いんですよ。毛鉤には丁度良い時間になりました。流してみましょうか。

「ミソサザイの遊ぶ谷には美しい岩魚が棲むんだよ。」
昔、誰かに教わりました。今日も、きっと美しい岩魚と出会えますよ。

そんな本沢も、今では遊歩道が巡り、誰でも入れる沢になってしましました。
あの小鳥たちはどうしたんでしょうねぇ。。。


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