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親父になる 第二部・26歳で息子を授かり、本当の意味での親父になるまでの物語。 第二部。(全25話)
親父になる 第三部・26歳で子供を授かり、本当の意味での親父になるまでの物語。新連載(連載中)

2014年7月22日火曜日

7 パパはお百姓

7・

ちっとばかり難しい話になっちまったもんで、ここらで息を抜く話でもするかなぃ。
昔の話だがな。

オラァが三十代の頃ぁウチには必ず誰か居たわなぃ。
オラチは鍵 なんてかけた事ねぇし、だいたい車がこっちに向かって来りゃぁオラチの客だわい。
オラチの奥に家なんか無ぇもんな。
オラァが仕事から帰ってくると、必ず誰 かが酒飲んでんだわ。
大工やら、土建屋やら、百姓やら。
何所で見つけてきたんだか、若ぇネエチャンも居るんだわさ。
ウチで会って結婚しちまった若ぇ奴もい るしな。

酒飲みでなきゃぁ分かんねぇかも知んねぇけど、酒は仲間ぁ増やすで。
酒と上手く付き合えりゃぁイッパシってか?

それがな、仲間の百姓が一人で街に飲みに行ったんだと。
そいつぁ根っからの百姓で、会社勤めなんかしたことねぇんだわ。
三十半ばで嫁もねえし。婆様と二人暮しなんだわ。
酒が好きでなぁ、オラチに来る時ゃ必ず一升瓶提げて来るでな。
そいつが何考えてんだか、街の飲み屋で酔っ払って名刺を配って歩いたらしいわ。
シコタマ酔っ払ってたらしいでぇ。
オラアの女房の知り合いの飲み屋のネエチャンがウチに飲みに来た時、その名刺を見してもらったんだわ。

笑っちゃったで。
肩書きが「百姓」。

奴ぁ、名刺が欲しかったんかなぁ。
配ってみたかったんかなぁ。
誰にも内緒で名刺作って、一人で酔っ払って配ってたっつんだから、なんだか可笑しいやら悲しいやら。

それにしても、何所で名刺を作ったんだか。
未だに言わねぇ。
これだけは酒飲ましても言わねぇな。

今じゃぁ、子供に「パパ」って呼ばせてる百姓だわさ。




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